人間堕落乃日々

草野球、小説など趣味を中心に日々を書き綴ってます。 小説は主にオリジナル、二次創作になります。二次創作は『魔法少女リリカルなのは』が中心になりそうです。

ジョジョのリリカルな冒険 第七話

『ジョジョカル』第七話。



「艦長、一体何の思惑があって、彼らを引き入れたんですか?」

「あら、聞きたい?」

三人が去った後、ユーノから聞き入れた現状とジョジョの予想を総合するために来ていた管制室から出たクロノとリンディ。
あの時はこの船のトップであるリンディが認めてしまった以上口出しはしなかったが、やはり民間人を巻き込むのはクロノの性に合わない。
とは言え、これも仕方ないのかもしれない。所属する管理局の事情を考えれば、自ずとリンディの目的も見えてくる。

「どうせ『三人とも管理局に来てくれないかしら』とでも思っているのでしょう」

「あら、流石クロノね。私の息子だけにあるわ」

ああ、やはり――と溜め息を漏らしたくなるが我慢する。リンディのスカウト癖は今に始まったことではない。
それにクロノもなのはの魔力資質には驚愕したぐらいだ。魔法文明のない管理外世界で、管理世界全体の五パーセントも満たないAAAランクの魔力資質持ち。
しかも僅か一月ばかりで空を飛び、砲撃魔法を身につけ、封印魔法も行使出来るという天賦の才というおまけつきだ。
ユーノの方はAランクと弱冠見劣りするが、それでも補助魔法のエキスパートであり『結界魔道師』と呼ばれるほどの結界魔法のスペシャリスト。
彼ほどの結界でなければ、昨夜のジュエルシードが引き起こした次元震に耐え切れなかっただろう。
だが、ジョジョの方は首を傾げざるを得ない。彼には何一つ魔力を感じられなかったのだから。
ジュエルシードの暴走に巻き込まれて仕方なしに付き合っているのかと思えば、なのはとユーノのジョジョに対する信頼感に疑問を感じてしまう。
何よりもふざけた奴だと最初は思っていたが、フェイトとアルフを引き込む方針を打ち出した時は一瞬面白く思ったのも事実だ。

「なのはさんは言うまでもなく、AAAランクという高ランク魔道師。ユーノ君も『結界魔道師』という専門家。
 ジョジョ君は、あの視野の広さから指揮官に向いた物があるわね。そして、情報を結合させて結論を導き出す力もある」

「確かに事件に巻き込まれた民間人でありながら、のめり過ぎずに一歩引いた視線で物事を見るのは好ましいものですが」

指揮官という道を進ませるのであれば、魔道師でなくても問題ない。指揮をするのにその人物に魔力がなくても出来るのだから。
現に『陸』――各管理世界の地上部隊指揮官には魔道師でない者が多数いる。
一番の有名どころを挙げれば、ミッド首都にある地上本部でカリスマ性と地上の平和を力強く公言しているレジアス・ゲイズだろうか。

「何よりも意志の強さを感じられたわ。じゃじゃ馬は牧場に放つよりも、手綱を握り締めている方が安全なのよね」

「なるほど。無理矢理現場に介入されたら堪ったものじゃないですからね」

現場を指揮するクロノにとって命令系統の混乱は非常に困る。それならば、初めからその中に取り込んでおいた方が安心出来るというものだ。

「それにジョジョ君の言った、彼女達のバックボーンを引き摺り出さないといけないわ。
 その為にもこちらの手札は温存しておきたいの。特にクロノは、アースラの切り札なんだから」

「お任せ下さい。必ずやこの事件を解決して見せます」

実の母親にまでそう言われたら嬉しくない訳でない。敬礼するクロノの力強い宣言を聞いて、リンディは一人満足そうに頷くのであった。





「駄目だよ。時空管理局まで出てきたんじゃ、もうどうにもならないよ。逃げようよ……二人でどっかにさ」

海鳴公園での衝突から無事拠点にしている遠見市の高層マンションへ戻ってきたフェイトとアルフ。
フェイトの腕の傷を手当てしたアルフは管理局の介入から逃走を持ち掛けるが、フェイトは首を縦に振らない。

フェイトの意志の強さは、誰よりもフェイトの傍にいたアルフが一番に理解している。
とは言え、相手が管理局ともなれば話が違う。自分達は犯罪者で、相手は法を取り締まる治安維持組織。
今までにも危ないおつかいはしてきたが、どれもが短期間に終わらせてきた物ばかり。
それは二人の実力があったからこそだが、何よりも管理局に介入されなかったのが大きな要因だろう。
規模も違えば、捜査技術力も戦闘技術も一級。一人二人を相手にするなら問題なくても、集団で向かわれたら如何にフェイトとアルフでも敵わない。
この拠点だっていつまでバレずに持つのかさえ分からないのだ。ジュエルシードの捜索も管理局の技術を持ってすれば、全て特定することも容易い。
後手後手に回ってしまう危険性を高い実力を持つ二人だからこそ気付いてはいる。

しかし、フェイトはそれでもジュエルシードの捜索は諦めない。いや、諦められない。
ジュエルシードの捜索は、フェイトの母親であるプレシア・テスタロッサの命令であり、お願いでもある。
娘のフェイトにとってそれは断れる物でなく、またその命令をこなすことが出来たならば誉めてくれるかもしれない甘い幻想を持っている。
断片的な記憶の欠片から思い出される、母親の優しさ。木漏れ日のような柔らかく自分に微笑みかける母の笑顔をもう一度見たい。
いつの間にか自分を見てもくれなくなった母親の『温かみ』を取り戻すためにどうしても諦められない。
それは、子供の我が侭かもしれない。だが、それを止めることは誰にも出来ないだろう。子が母に甘えるのはどうして悪いのか。
それ故にアルフの心配も断るしかない。純粋に心配してくれるアルフの気持ちがどれだけ有難くても。
親と子の絆は、何よりも代え難い絆なのだから。

もっともアルフにはそれが分からない。アルフにとって、プレシアはフェイトを道具のように扱い、任務を果たせなければ虐待を行うだけの人間。
いくら母親であろうともそれは認められないし、許せないことだ。主人に付き従う者にとって、とても我慢にならない。
以前のプレシアの姿を知っているのならばアルフも考えを変えていたかもしれないが、所詮それは『IF』の話。
しかし、フェイトがそれを受け入れている以上どうすることも出来ない。主人がそうするならば、付き人もそれに従うだけ。
だからプレシアの言いなりでなく、フェイト自身の為に戦うことを約束させるしか出来ない。そして、害なすものは全て排除することを己自身に誓うだけだ。

「それにしても……あの男、どうしてフェイトを助けてくれたんだろうね。私達は敵だっていうのにさ。まさか恩を売って、恩着せがましく迫ってくるんじゃないだろうね」

フェイトは義理堅い。恩を売られたとすれば、敵だとしても恩を返しかねない。アルフはそれを心配する。

「それはないと思うよ。もしあったとしても今日のジュエルシードを渡したことで貸し借りなしだよ」

首を振るフェイト。その言葉に獣としての鋭敏な感覚からでも嘘は感じられなく、全く気にしている風にも見えない。
となれば、後は白い魔道師――なのはだけを気をつけるだけだ。なのはの言葉は、フェイトの心の奥底を揺らがせる毒素がある。
昨夜の件でもフェイトの心は揺すぶられている。アルフがすぐさま一喝を入れなければ、負けていたかもしれない。

「大丈夫。私は負けないから……母さんが待っているんだから」

フェイトのその言葉にアルフの表情に陰を差すが、アルフは首を振って打ち消す。
それから二人は、管理局の動向も含めたジュエルシード捜索の予定を煮詰めることにした。





「ただいまっと」

築数十年も経っているだろう、木造住宅の平屋。それが、ジョジョが祖父母と一緒に住んでいる家だ。
ガラガラと引き戸を開けて入ると良い匂いが漂ってくる。時間も既に夕方を過ぎており、祖母が夕食の支度に入っているのだろう。
もう空腹状態のジョジョは制服から着替えることも後回しにし、台所へと足を運ぶ。
台所に入れば、祖母がコンロの前に立っている。フライパンを動かしている姿から焼いているのだろう。
卵の殻があるからオムレツを焼いているのだと分かる。上手に上下へ動かすフライパンの上では綺麗な楕円形のオムレツが見えた。

祖父と同じく齢七十を迎えているが、テキパキと料理する祖母の姿はずっと若々しく見える。
毎日炊事に洗濯に掃除にと身体を動かしておけば、年を取ったとしてもいつまでも若くいられるというのが祖母の信条だ。
そのおかげで祖父もジョジョも料理も洗濯もしたことがない。精々自室の掃除ぐらいしかやっていない。

『男子厨房に入るべからず』の古き家庭だが、家庭内での番付では祖母が一番だ。
家事を任せっ切りの祖父は、家ではすっかり頭に上がらない。祖父の屈強な外見から亭主関白に思われがちだが、実際はかかあ天下。
しかしそれは家庭内のことだけで、外に出れば一歩引いて夫を立てる。女が出しゃばるのは家の中だけ。
だからこそ夫婦円満だとジョジョは思っている。古く良き夫婦像とも言えた。

「あら成美、帰ってきたんだね。早く手を洗って、うがいをしなさい」

焼き上がったオムレツを皿に移していた祖母は、ジョジョの姿を見てようやく気付く。
食卓の上には空のお椀が三つ逆さに並べられ、湯気を上げるオムレツが三つ並んでいた。中央には大皿に盛られたサラダもあり、後は味噌汁を並べて本日の夕食は完成だろう。
一家揃って夕食を取るのが、城家の決め事。祖母も祖父を呼んでくるだろう。その間にジョジョは手洗いとうがいを済ませた。

「おう。今日はオムレツか。こりゃまた美味そうだな」

「中にお肉や野菜を入れているから栄養もバッチリですよ」

大股で遅れてやってきた祖父――常禅がいつものポジションに座ると、ホカホカのご飯を盛ったお椀を祖母から受け取る。
これで準備万端。常禅の掛け声に合わせて、三人の「いただきます」が響くとそれぞれ思い思いに箸を取る。



「なあ、祖父ちゃん祖母ちゃん。話があるんだけどよ、いいか?」

食卓の上の料理も殆ど平らげた時にジョジョはゆっくりと打ち出した。話とは当然アースラに乗り、本格的にジュエルシード捜索に打ち込むことだ。
もっとも魔法については誤魔化しつつ説明しなければならないが、その辺りの問題も幾つか考えもある。

「話ってのは、アンタが最近遅くまで歩き回ってることに関係あるの?」

聞き直すのは祖母。相談事はいつでもまず家庭の実権を握る祖母からだ。手にしていた茶碗を卓上に置くとジョジョと向き合う。

「それもある。俺のダチがな、大事な宝物を落っことしてな。それを探してあげてたんだが」

「それで」

言い難そうにするジョジョの態度に祖母は穏やかに続きを促す。祖父はそのやり取りを横で聞いているだけだ。

「だけど、その大事なモンを狙う輩がいてな。困った事態になってんのよ」

「あらあら」

「それをどーにかして頑張ってんだけど、向こうも意地になっているから中々話がつかなくてな」

「そう。困った子だわね」

「それで今度お互いに納得出来るまでトコトン話し合うってことにしたんだ。その為にはちょっと家を空けたいんだけど」

余りにも省いてしまった事情説明だが、多分に魔法が触れてしまうために致し方ない。
ジョジョもこの説明で納得させられるとは思ってもいないが、これはあくまでも切り出し。初手に過ぎない。
そこから納得させて認めさせる方向へとシフトしていく方針だ。もっとも老練な祖母から切り抜けるのは柔ではない。

「なるほどね……いいじゃないかい。そのお友達の為にやるんでしょ? だったら家でも学校でも休んで行ってらっしゃいな」

「……へ? いや、そこは普通怒るところじゃあねーのか? そんなこと言う自分もなんだけどよぉ」

だからこそあっさりと許可を出してくれた祖母に突っ込まずにいられなかった。流石のジョジョも焦る。
祖母はそんなジョジョを見ながら諦めにも似た溜め息を零し、ゆっくりと理由を話す。

「アンタもいつかそう言うんじゃないかって思ってたのよ」

「祖母ちゃん、どういうことだ?」

「私の旦那もアンタの父親の譲治もよくあちこちへ出掛けたわ。旦那は武者修行、息子は人生経験だとか。
 旦那の父も祖父も仕事であれ趣味であれ、色んなところに行ってきたそうよ」

祖母が語るのは、歴代城家の男子の奔放振り。少なくともジョジョから四代前から確認されている。
常禅も若き頃は、己の腕を磨くために世界各地を飛び回った。その過程で波紋を知り、身につけたのだ。
ジョジョの父――譲治も起業して青年実業家を目指し、人生経験を積むために学生時代は奔放の日々だ。
初めこそ反対だった祖母も勝手に振舞う二人に諦めについた。どれだけ反対しようとも周囲の声が耳に届かないのだ。
これが、城家の血筋。冒険を夢見る子供らしさが残るのが、城家の定めだと認めるしかなかった。
だからこそ理由が何であれ、いずれジョジョも家を飛び出す時が遅かれ早かれやって来る。
それが、今この時だと祖母は悟ったのだ。

「成美は旦那の孫で、譲治の息子。心配だけど、無茶するのは分かってるわね。もう五十年近くも一緒にいるんだからねぇ。
 だったら、成美の気が済むようにやらせるのがいいよ。私の意地で、孫に思い残しなんてことをさせたくないよ。
 それに他人の為に行動を起こせるような孫を持てたことを誇りに思うよ」

「祖母ちゃん」

「いいかい、成美。どんな時でも『正しい』ことを忘れちゃ駄目だよ。『正しい』ことが誇りであり、人の役目。
 世の中『性悪説』なんて言葉があるけど、生きる上でそれは仕方ないことさね。私はちっとも悪いとは思わないよ。
 いいかい。本当の『悪』ってのは、自分の利益のためだけに他人をいい様に利用することを言うのだよ」

「俺ぁ、小っ難しいことは言えねぇよ。だけどよ、人のモンを横取りしようとする困ったチャンには人の道理ってぇーのを教えてやるのも人の役目よ」

それに反対なんて言えた義理じゃあねぇしな――と常禅は笑いながら頭を叩く。重苦しくなった雰囲気が、それで少しばかり明るくなった。
祖母は渇いてしまった喉をお茶で潤して、ジョジョに改めて確認を取る。

「明日から行くのかい?」

「出来るだけ早めに解決しなくちゃあならねぇしな。明日の朝一に出るつもりだ」

「じゃあ、学校の方には俺から言っといてやるよ」

常禅が申し出る。ジョジョの保護者になっているから当然の申し出と言える。祖母も対外的なことは常禅に任せている。

「いつ帰って来れるんだい?」

「落としモンは全部で二十一個あってよ。残りのを拾い集めることも入れたら、ちーっとばかり時間がかかるかもしんねぇ」

「お金は大丈夫かい? ご飯とか泊まる場所とか色々と入用でしょ?」

「その辺は、全部ダチの方が用意するってさ。せめてものお詫びだってよ」

「本当にかい? あまり迷惑をかけんじゃないよ」

「分かってるぜ」

「じゃあ、他に言うことは何もないよ。頑張ってらっしゃいな」

「勿論だぜ!」

祖母を安心させるように力強く頷き返す。いくら城家の定めと言っても息子夫婦が遺していった、たった一人の孫。
息子達に代わってジョジョを育ててきた祖母にとって何よりも寂しくもあり、心配でもある。
ひょっとしたら息子のように還って来ないのではないか――頭にそう過ぎってくる。息子に先立たれた祖母にとって当たり前の心配。
それを感じ取っているからジョジョは安心させるために微笑む。祖母の中の『恐怖』という心の病魔を打ち払うように。





その翌日、まだ日も昇らない朝。僅かばかりの準備を終えたジョジョは、集合場所である海鳴公園でなのはとユーノと合流。
アースラ側の転送魔法でアースラに乗り込んだ。これから先は、ジュエルシードを確保しつつフェイトとアルフの『保護』。
そして、その裏にいるだろう黒幕を引き摺り出してやることだ。

ジョジョにとって、フェイトは非常に気掛かりな存在であった。なのはと同年代であろう少女が、何故犯罪に手を染めているのか。
ジュエルシードの争奪戦を単独行動だとすれば、打ち負かした後に叱ってやればいい。
後のことは管理局に任せればいい。いくら子供と言えども、彼らの法に則れば犯罪者であることは変わりない。
なのははごねるかもしれないが、それが人の世の中――社会の仕組みという物だ。
むしろ、今回のことで倫理観を身につけてくれればいいとすら思っている。その為がフェイトにとって後々良い験しになる。

しかし、フェイトを操っている黒幕がいるとなれば話は別物だ。一気にきな臭い物に変わる。
そもそもフェイトは、一体何処からやって来たのだろうか。一体誰の下からジュエルシードの捜索にやって来たのか。
ユーノやクロノという存在を見る限り、魔法世界では子供すら大人と同等の立場になれることは見て分かる。
そのことから一瞬嫌な予感が過ぎる。まさか、彼女の親が犯罪行為をさせているのではないか?
ジョジョの世界ですら子供に万引きを命令する親もいる。ジョジョは、そういうニュースも何度か見てきた。
有り得ないとも言い難い。フェイトの魔法技術は、魔法世界で生きてきたユーノの言葉に寄れば一流の魔道師と言い切っている。
その優秀さを目につけて、より凶悪な犯罪に走らせることだって否定出来ない。
そして、実の親からの命令だからこそ、そこに何の疑いもなく実行してしまうのではないか。

いや、そんな想像は詮無きことだとジョジョは首を振る。今は、フェイトとアルフをどうにかして引き込むだけだ。
そこから新たに手に入る情報についてはその時に考えればいい。未来のことをどれだけ考え抜いても『予測』でしかないのだから。
管理局が介入した今をいい『流れ』だと思おう。風はこちらに吹いている。
新たな力も手に入れつつある。後は数をこなして身体に馴染ませるだけだ。
状況はこちらに傾いている。全てが終わるのは、もはや時間の問題だ。川の流れに身を任す木の葉の如く流れに従おう。
そして、ジョジョの予想通りに数日後に全てが終わることになる。新たな『出会い』と『別れ』をもたらした、『ジュエルシード事件』は。





ジョジョ達がアースラに乗り込んだ日の私立聖祥大学付属男子中等部は、いつもと変わらぬ朝を迎えていた。
登校時刻を迎えた、男子達だけが占める教室内は騒々しい。担任が来るまではそれぞれのグループで友人との交流を楽しむ。
昨日のテレビの話やゲーム、スポーツ、部活動などとグループごとに話題は違うが、皆楽しげであることは表情を見れば分かることだ。
中にはグループに混じっていない生徒もいるが、その生徒らは寝ている者もいれば、課題を勤しんでいる者と仲間外れにされている訳でもない。
高い教養を受ける私立ということもあり、中等部からの転入生もいないこのクラスは、初等部からの付き合いだけに概ね平和と言える。

「おはよう、皆。席に着けー」

教壇側のドアがスライドされるとこのクラスの担任が入ってくる。
落ち着いた色のスーツとブランド物のネクタイがささやかな自己表現としている、働き盛りの三十台半ばの男子教師だ。

担任が来たことで自分の席に着いていなかった生徒は慌てて席に着く。寝ていた生徒も寝ぼけた顔で起き出した。
そして、日直の号令と共に挨拶をすると担任は日課である出席確認を始める。

「あー、最初に言っておくが、ジョジョの奴が今日からしばらく休むそうだ。何でも家の事情でな
 今まで皆勤だったのに勿体無いことになっちまったなぁ。ま、ジョジョの話は置いといて、出席を取るぞー」

担任から告げられたジョジョのしばらくの欠席に生徒達も俄かに騒がしくなる。周りの席の生徒と小声で話す生徒もいる。
担任の言う通り、皆勤だったジョジョが休むこと事態が一種の事件とも言えた。何があったのか、邪まな推測が飛び通ったりする。
しかし、誰も事情を知らないために話は推測の域を出ず、すぐに収束してしまうのだが。

「黒沢。……黒沢ぁ〜。……なんだ? 黒沢も休みなのか?」

順当に出席確認していた担任は名簿から顔を上げ、黒沢の席を確認する。廊下側の二列目の真ん中がその席だが、そこは空席になっていた。

「誰か今日黒沢を見たの見るか?」

担任が生徒達に問うてみるも首を横に振るだけだ。遅刻するような生徒でもないため、今日は欠席なのだろうかと勘繰る。
しかし、そういった連絡を貰っていないために何とも言えない。職員室に戻ったら、黒沢の自宅に電話してみようと考えるだけで深く考えることは止めた。

生徒達も黒沢の欠席にまた騒がしくなる。ジョジョの幼馴染だけに二人して何かあったのかと思いたくもなるのだ。
もっともジョジョが家の事情と伝えられているだけに、何の連絡もない黒沢までも一緒だと考えるのは馬鹿馬鹿しく、結局は風邪でもひいたのだろうと落ち着く。

「黒沢のことは後で電話してみるか。じゃあ、続けるぞ〜」

黒沢の欄に欠席の印を入れた担任は出席確認を再開する。生徒達も名を呼ばれると一人ずつ返事する。

いつもと変わらぬ日常。ジョジョと黒沢が欠けただけで、日常は何ら変わることもなく紡がれる。





TO BE CONTINUED……?
  1. 2010/05/03(月) 13:34:05|
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  1. 2013/06/06(木) 13:07:45 |
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